― 戦後教育60年の総括と将来像を考える ―

大学受験・進学60年史プロフィール

エリートからマス、ユニバーサル期への"激動の軌跡"

  1. 大学受験・進学60年史プロフィール PDF版ダウンロード
  2. 大学受験と進学に発想の転換
  3. 大学・短大進学率等に見る「区分」
  4. 出生年別/大学・短大等 "激動"入試の軌跡―あなたの"あの日あの時"は?
大学受験・進学60年史プロフィールと東京大学 代田恭之 大学受験・進学60年史プロフィールと早稲田大学 代田恭之 大学受験・進学60年史プロフィールと慶應義塾大学 代田恭之

大学を見る確かな目 ここまで変遷した大学受験・進学 月刊『高校教育』誌連載

第5回 「東大入学辞退381人」の異変 8月号

第5回 「東大入学辞退 381人」の異変 8月号
1.東西受験の"ベルリンの壁"崩壊
国公立大学は昭和62年度から、あのエポックメーキングな “受験機会の複数化"入試を導入しました。私立大学をも巻き込み、戦後の受験地図をドラスティックに塗り替えるような波乱・混乱の入試変革を、皆さんはどのようにに評価されましたか。
例えば東京大学では、62年の初年度から同大学にとって入試史上最多となる「入学定員オーバー518人の合格者」 (定員3,218人)、さらに翌63年度にもこれまた史上最多の「318人の入学辞退者」(合格者の約1割)など予期せぬ対応に見舞われました。一方、西の京都大学でも入学辞退者続出で、62年度には東大をはるかに上回る1,481人も上乗せした合格者(定員2,716人)を発表するなど異常なスタートになりました。
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言うまでもなくこれらの要因の一つは、東西トップ校の東大・京大間で初の併願が可能になったことです。 それはあたかも両大学併願の“ベルリンの壁"崩壊であり、戦後60年続いた併願遮断の壁は撤去されたのです。こうして、待望の東大・京大受験の自由化は実現し、その意味では受験機会の複数化がもたらした数少ない“光"でありました。 しかし、ここで看過できないのは、異常なまでの大量の合格者発表や入学辞退者の出現による受験界の混乱です。その要因の一つは、受験の複数化に名を借りたきわめてバランスを欠いた「A・B日程方式」 にあったのです。バランス欠落と言えばは、例えば旧帝大系や有力大学を中心とした東西分割のグルーピングや、柔軟な分離分割の発想なき硬直的実施方法などです。関係者間では当初から問題視されていましたが、例えば東大と一橋大・東京工大・お茶の水女子大などとの“ストップ・ザ併願"です。
当時、私は東西のグルーピング等を“フォッサ・マグナの危機"と呼んでいましたが、危惧したこのA・B方式が第1回から機能不全を起こしました。そして、平成元年前後から登場し始めた前期・後期の“分離分割方式"が、A・B方式のもたらした混乱をようやく沈静化させたのです。私たちの予想は的中しました。まさに当初導入のA・B方式こそは、やや過激発言になりますが、 国立大入試に混乱を招いた最大の元凶であり、受験機会複数化の“影"に相当するのではないでしょうか。
そこで今回は、次に掲載の「東大入試に見る合格者と入学辞退者の推移」 をベースに、受験機会複数化初期スポットを当て“光と影"の一端を検証してみます。
大学受験とマナビゲート

東大入試に見る合格者と入学辞退者の推移
(上の画像クリックで詳細(PDF)をご覧頂くことができます。

2.東大・京大ダブル合格1,500人
ここでは複数化初年の昭和62年度を基点に、その前後5年間(昭和61年度〜平成2年度)に限定して考察します。まず初めに、当該年度別動態を大略次のように整理しました。
●“前震"の昭和61年度:旧一本化入試最終年度、東大定員増、入学辞退者微増、
●“激震"の昭和62年度:受験機会の複数化実施、東大B日程方式、大量の定員超過合格者と入学辞退者(いずれも過去最多)、京大は法学部(A・B日程方式)除きA日程方式、京大も大量の定員超過合格者と入学辞退者、
●“烈震"の63年度:東大B日程方式、大量の定員超過合格者と入学辞退者(過去最多)、京大で一部学部等が変則的分割方式、法学部はB日程へ(東大対策等)、
●“中震"の平成元年度:東大B日程方式、定員超過合格者と入学辞退者各100人以下に減少、 京大が法学部除き全学部で分離分割方式、
●“中震"の2年度:東大分離分割方式(前期募集重点型)、定員超過合格と入学辞退者減少化 これらの年度別動態により、それぞれのデータに包含された原因・結果・背景・影響などがスムーズに読み取れ、変動期の全体像が正確に理解できるものと思います。昭和62年度・平成元年度・2年度については、科類別データも併せて掲載してありますので、文系・理系の科類別の具体的な動向確認も可能です。
それでは以下、私からのコメントを2点補足しておきます。第1点は東大・京大に関してですが、実は当時の『蛍雪時代』の調査によれば、62年度の東大・京大のダブル合格者は約1,500人を数え、その多くが東大へ流れたといった記録があります。東大・京大の定員超過の合格者や予想外の入学辞退はこのデータから考えても予想されるところです。第2点は東大・京大を除くその他の大学については、その多くがA・B日程による閉鎖的・限定的併願システムによって進学校決定に苦慮したこと、などです。
21世紀に突入し知識基盤社会が始まっている今、受験と進学には新しい学びの風が吹き始めています。学びの選択幅を狭小化するような入試“怪革"が国家的損失であるこは自明です。最後になりますが、特に法人化した国公立大学においては、受験界に新たな希望の光を灯していただきたいものです。

データにつきましては特に「東京大学本部入試グループ」 のご協力をいただきました。
<参考>

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